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2019.06.26

空き家問題

「空き家問題」(祥伝社新書)という本を読んだのだが、あまりにもくだらない。地域の復権という奇妙な提言がなされているが、むしろ人間と人間のつながりを完全に切り捨てて孤独に生きる権利こそが大事である。更地にすると固定資産税が跳ね上がるとか、そういう基本的な解説もなされているから読むのが無駄というわけでもないが、類書でも同様のことは書かれているので読む必要はない書物である。ともかく孤独は大事であり、まったく解消する必要はない。そして移動の自由こそが新しい権利として高らかに謳われねばならない。土地にしがみつく権利は陋習として排除されねばならない。金銭的補償や代替地の提供は必要だが、「何がなんでもここに住む」という輩を強制排除してこそ人間は自由になれる。居住地に個性はいらないし、交換可能でなければならない。住んでいる場所の名前さえ知らないほうがいい。隣人の名前を知りたくないのだから、居住地の名前を知らなくてもいいであろう。というより、世の中の趨勢は明らかに土地の匿名化に進んでおり、空き家というのは、「自分の土地」への執着が賞味期限を過ぎて膿んだ瘡痕である。人々が新築マンションに群がる理由として、一軒家のセキュリティが低いというのはまったく正しくないし、実際は、一軒家が持っている顔が嫌なのである。玄関を無防備にさらけ出して接道している醜態が疎まれている。ひとびとが求めているのはセキュリティの強化ではなく、一軒一軒の玄関に顔がない匿名状態である。都心の小綺麗なマンションならどこでもいいのであり、その利便性の高さだけが重要であり、場所へのこだわりはない。われわれが求めているのは大都市の交通機関であり、現在の電車の速度の制約からして都心から遠いと不便な現状があるだけである。個性的な邸宅を求める人間だっているだろうが、「特定の土地にしがみつく」ことだけは忌避されなければならない。居住地の無個性化という大目標を達成する妨げになるなら、その個性的な邸宅を排除するのみである。
2019.06.04

不適応と淘汰

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熊沢英一郎さんが元事務次官の父親から殺害された事件について、この父親に共感するのは明らかな危険思想である。熊沢英一郎さんは何しろ元事務次官の息子なのだから、どこかしら使い所はあったはずである。東京大学で最上位の頭脳の遺伝子を引き継いでいるわけだ。九州の山奥でガリ勉ロボットとなり、東大に辛うじて合格という具合だとパラリンピックだが、事務次官まで行けるならオリンピックの金メダルである。熊沢英一郎さんが欠陥人間なのは確かだが、その欠陥に着目し烙印を押して疎外してきた社会がこういう悲劇を生み出した。hagexを殺害した低能先生みたいな凶行もあったが、この手の人が現実に刃物を突きつける確率がかなり低いのも確かである。低確率のテロリズムの可能性がある引きこもりのネット弁慶が大量にいるのだから、つまるところ、母数が多いだけの話である。引きこもりが本当に通り魔を犯す確率は低いのだが、引きこもり自体が多いので、犯罪の実行が多いという錯覚が生まれる。あるいは、この手の人間が犯罪で捕まると、ネットで荒らし回っていた生活歴が露呈するので、その書き散らされた支離滅裂な言葉が危険人物という確信を補強してしまうのだが、自ら吐き出したものであるとはいえ、裏側での暴言を録音されたのに似ていて、人間そんなものだと達観するのも可能である。われわれが直面しているのは、引きこもりの犯罪率ではなく、母数がやたらと多いことなのである。不発弾があまりにも多すぎる。山奥の母子家庭でガリ勉して東大にギリギリで合格・不登校・退学という人であれば矯正不能という判断になろうが、熊沢英一郎さんは父親が東大で最上位なのだから、どこかに社会的ポジションを与えるほうが建設的だった。われわれの社会は、就職できない理由をたくさん考え出して人間を排除して、完璧でなければ生きる資格がないという思想を広め、引きこもりを増やしてきたわけである。失格の烙印を押して引きこもりの母数を増やしてきたことが、これからの生活保護問題でも重くのしかかる。たとえばロイヤルニートとして名高い小和田雅子さんという人がいるが、引きこもりだから小和田雅子さんを排除するという考えもあろうし、どうにか皇后にして機能させようという考えもある。思想には自由があるから、小和田雅子さんは永遠に引きこもり状態が似つかわしいと主張してバッシングしても差し支えないのであるが、わたしはそれは愚見であろうと思う。世の中に適応できずに立場を失った人を叩き潰すという発想もあれば、立場が人を作るという方向性で解決する策もある。熊沢英一郎さんについては、事務次官の頭脳を引き継いでいるのだから、安易に排除するよりは、使い所を考えるべきであった。他人を不採用にする理由だけはいくらでも思いつくわれわれの社会が引きこもりを大量生産し、生活保護の負担を増大させている。
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