アマゾンで本を買うと中身がわからないので、時たまゴミのような本に巡り会ってしまうことがある。

天才を考察する: 「生まれか育ちか」論の嘘と本当 [単行本]デイヴィッド シェンク

2500円もするが、かなりのゴミだった。誰でもアインシュタインになれる、と明言しているわけでもないが、そう言いたげな記述が多数見られる本である。(見たことはないが)代々木アニメーション学院のパンフレットみたいなノリである。

この本の何がまずいかというと、天才を超越的な存在と見なしてないことだ。あくまで相対的なものであり、努力で追いつけるという話である。そんなのはあり得ない。

たとえば東浩紀とハイデガーでは天と地ほどの差がある。東浩紀は単なる秀才である。勉強も努力もしただろうが、東浩紀とハイデガーでは、まったく次元が違うのだ。東浩紀がどう頑張ってもハイデガーにはなれない。この本はそういう「次元の違い」を否定しており、努力の延長で何でも出来るというノリである。東でなくても、たとえばハーバード大学のサンデル教授でもいい。ハイデガーに比べたらサンデル教授は完全なゴミである。天才というのは、それだけ桁外れの存在なのである。

この種の「誰でもアインシュタインになれる」という趣旨の本は一定の需要があるようだ。明らかなゴミとしか思えない本が出版されているということは、嘘で癒されたい人がいるのだろうと思う。実行不可能なことを可能だと強弁する自己啓発本はなぜか本屋の一角を根強く占めており、結構な人気があるのだ。ネットでレビューを見ても、この本を読んで勇気や感動をもらった馬鹿がいるようだ。(レビューが悪くないからわたしは買ってしまったのだ)。「誰でもアインシュタインになれる」という言説は、自己啓発としてとても根強いと思う次第。アインシュタインは知能指数が低い人のヒーローである。(アインシュタインはあくまで発達障害であり、低知能とは違うと思うが)。努力のモチベーションになるなら嘘でも構わないらしい。

結局のところ「不可能を可能にする」という物語性の問題だ。実際は不可能なのだが、それを可能だと信じることで感動する人もいるわけである。まともに反論することさえ、無意味な本と言えるかもしれない。







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