カチェリーナは何とかしてグルーシェンカの弱味を握ろうと思った。このままではグルーシェンカに負けてばかりなので、なにかしらスキャンダルでも発掘すれば対抗できると考えたのだ。カチェリーナは宮殿の外に出ると庭師に話し掛けた。
「近くの修道院にグルーシェンカという人間のクズが住んでるんだが、あいつはずいぶん悪評があるのだろうな」
「あのグルーシェンカさんに悪評が? そんなわけはありません。あの人はすごい人気があって、政財界の大物があの修道院を訪れているそうです」
「あいつは社交性だけはあるからな。ゴミのような人間でも社交性さえあれば通用するわけだ」
「グルーシェンカさんはすごい人格者だと思いますけどね」
「そんな馬鹿な話があるか」
カチェリーナは怒りにまかせて庭師を殴り、それから自室に向かった。そして秘密兵器のNexus 7を取りだした。iPhoneと違ってネットサーフィンがやりやすい。これなら、グルーシェンカの秘密も見つかるだろう。カチェリーナはゴロゴロしながらネットばかりやってるので、こういうことには長けているのだ。
「さてと、グルーシェンカの正体を暴いてやるか」
カチェリーナはNexus 7を操作し、グルーシェンカの情報を探した。あの悪魔的な無神論者は、一皮剥けば、かなり真っ黒な実態があるはずだった。やがてカチェリーナはグルーシェンカのFacebookを探り当てた。カチェリーナは生まれてから一人も友達がいないのでFacebookなどやってなかったが、グルーシェンカはなまじ社交性があるので、Facebookをやったりしているのだ。
「こんなツールで個人情報晒すなんてバカの極みだ。さてと、グルーシェンカの惨めな実態を観察してやるか」
しかし見てみると、グルーシェンカはかなりの影響力があるようだった。カチェリーナはFacebookのことはよくわからなかったが、それでもグルーシェンカの顔の広さは見て取れた。さきほど庭師から聞いた政財界の大物と交流があるというのも本当らしかった。カチェリーナはプルプルと震えていたが、まだ耐えていた。今はソーシャルスキルの時代である。社交性さえあれば、グルーシェンカのようなゴミが人気になるのだ。そうやって自分に納得させていた。だが、さらに調べると驚愕の事実を目にしてしまった。グルーシェンカは15歳なのに、もう大学を卒業していた。
「こいつ15歳なのに大卒なのかよ」
偏頭痛を理由に学校に行かず、友達がひとりもいないカチェリーナとは対極の人間だったのだ。カチェリーナは痙攣して口から泡を吹いた。もはや白眼を剥いて気を失うしかなかったのである。
やがてカチェリーナは揺り起こされた。目の前にはグルーシェンカの姿があった。
「どうやらわたしのFacebookを発見してしまったようですね」
「おまえ、15歳で大卒というのは本当か」
「本当です。カチェリーナ様が15年間ゴロゴロしている間に、わたしは勉強していたのです。わたしとカチェリーナ様はまったく同じ日にウクライナに生まれましたが、それから15年間の過ごし方が対照的だったわけです」
そこには努力した人間と努力しなかった人間の圧倒的な格差があった。住む世界が違うのである。努力家の前では、これまでの人生で何をやって来たかが問われる。
「努力している人は他人から好かれます。カチェリーナ様に友達がいないのも、そこが原因です」
カチェリーナはぐうの音も出なかった。確かに、やる気がなくゴロゴロしているだけの人間が人気者になるわけがない。
「わたしが失った15年間の生活はどうすればいいのだろう」
「努力するためには時間性への認識がしっかりしている必要があります。ここが甘いと努力出来ません。人間存在は歴史性を背負っています。肉体は生まれて死にますが、その寿命の間は連続性があり、歴史を背負うのです。詰んだからと言って、他の肉体に移り変わって別の人生にすることは出来ない。過去と未来も踏まえながら生きていれば、自然に努力するようになります」
カチェリーナは現在が快適であることだけを求めていた。寝ていると偏頭痛が楽になるという理由で、ゴロゴロし続けていたのだ。そのゴロゴロし続ける現在が刻々と積み重なり15年が経過したのである。
「時間は投資と消費に分けて考えてください。投資なのか消費なのか、それを意識することでカチェリーナ様も変われるはずです」
「なるほど、考え方を変えればまだ手遅れではないのだな」
カチェリーナがそう言うと、グルーシェンカは無言になった。要はそういうことなのだ。







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