カチェリーナはグルーシェンカに土下座した。そして頭を床に擦りつけた。
「100万ドルやる。だからわたしの友達になってくれないだろうか」
グルーシェンカは無言だった。
「わたしが表に出ない理由として、友達がひとりもいないので、ぼっちは恥ずかしいという思いがあるのだ。だから、なんとか友達が一人でもいれば」
「お断りします。一日中ゴロゴロしている人と友達にはなりたくありません」
「では1000万ドル払うので頼みたい」
「嫌です」
「1億ドル払おう。ここが限界だ」
「嫌なものは嫌なんですよ。他のひとに頼んでください」
「金額をつり上げようとしてるのだな。この守銭奴め」
カチェリーナはグルーシェンカに掴みかかったが、投げ飛ばされ、床にたたきつけられた。大の字になりながら、カチェリーナは天井を見上げた。その顔をグルーシェンカが踏みつけた。
「わたしは金持ちの貴族なので、お金では動きません。1万ドルも払えば友達になってくれる人はたくさんいるでしょう」
「有象無象の雑種では意味がない。ちゃんと血統書が付いてるような、そういう友達でないと」
「わたしが名門貴族だと知ったら急に友達になりたがるとか、そのあたりがクズなのです」
「わたしはこのまま天涯孤独ということか」
カチェリーナの目から涙が溢れてきた。しばらく沈黙の時間が流れた。
「カチェリーナ様を更生させるために一週間ほど合宿をするというのはどうでしょうか。わたしと一緒に生活することで、いろいろ改善していきます」
「一週間でどうにかなるのだろうか」
「無理強いはしません。御本人に意欲がなければ意味がないです」
「いや、是非やらせてくれ」
カチェリーナは土下座して頼んだ。自分に染みついたクズっぷりが一週間で治るとは到底思えなかったが、グルーシェンカと一週間過ごせば、もしかして友達になれるかもしれなかった。
「使用人に頼んで、おまえが泊まる部屋を用意させよう」
「合宿はわたしの実家で行います。カチェリーナ様の城では意味がないです」
「それは勘弁してくれ、わたしは貴族へのコンプレックスが強いのだ」
グルーシェンカの家はかなりの名門である。そういう家への憧れはあるが、自分ではそこに相応しくない。カチェリーナでは身の置き所がないだろう。
「カチェリーナ様が嫌ならやめましょう。この話はなかったことにします」
「いや、何が何てもやらせてくれ。どうしても参加したい」
カチェリーナはグルーシェンカにすがりついた。
「わかりました。では準備を始めます」
グルーシェンカは部屋の外に出て電話をしているようだった。やがて戻ってくると、すぐにでも合宿を始めると宣言した。グルーシェンカの家の車が迎えに来た。カチェリーナはそれに乗せられた。カチェリーナが領地から外に出るのは生まれてから初めてだった。車が停まって、顔を上げると、そこには一際大きな豪邸があった。
「まずわたしの両親に挨拶していただきます」
「それはわたしにはハードルが高いぞ」
カチェリーナは臆した。
「うちの両親は美少女が好きなので大丈夫です。カチェリーナ様のことも知っています。カチェリーナ様は話をすると人間のクズであることがバレるので話さない方がいいでしょう」
両親が待っている居間に通され、カチェリーナは挨拶をした。いかにも育ちのよさそうな貴族という両親だった。両親はカチェリーナに好感を持ってくれたようだ。たいして話はせずに、グルーシェンカがすぐに切り上げた。そして二階にあるグルーシェンカの部屋に案内された。
「これから一週間、ここで寝泊まりすることになります」
「なかなか楽しみだ」
両親との挨拶という難関をくぐり抜けたので、カチェリーナはわくわくした。グルーシェンカの部屋は女の子らしく、いろいろなものがとても可愛くあつらえられていた。ここにお泊まりしてキャハハウフフと過ごすのは、天国としか思えなかった。青春というものが一欠片もなかったカチェリーナだが、ようやくそれに辿り着いたのだ。
「ところで、この合宿には参加者がもう一人います」
「えええ」
「わたしの親戚の子です。うちの一族は大概優秀なのですが、ひとりだけ例外的なゴミがいるのです。別室にいるので会いに行きましょう」
グルーシェンカに促され、カチェリーナはその部屋に出向いた。
「わたしの親戚でナスターシャといいます。カチェリーナ様と一緒に生活改善の合宿を行うメンバーです」
ナスターシャは無言だった。いかにも人間のクズというオーラが漂っている少女だった。容姿は平凡で、粗末な印象が伝わってくる。どこを見ているのかわからず、何を考えているのかわからないタイプであった。
「ナスターシャは勉強は出来るので馬鹿ではないのですが、あまりにも社交性が無く、意欲も乏しいです。カチェリーナ様と同じく、ゴロゴロしていることが多いので、二人まとめて根性を叩き直します」
それからカチェリーナはグルーシェンカの部屋に戻った。
「ナスターシャにはどんな印象を抱きましたか」
「あいつはダメだろう。確実な人間のクズ。見ただけでゴミだとわかる」
「だからカチェリーナ様に丁度いいと思ったのです。お友達を探しておられるようですから。似たようなタイプで同レベルです」
「あいつと友達になるくらいならぼっちの方がいい」
「ぼっちがぼっちと付き合えば友達問題は解決します」
「ぼっちにもプライドがある。わたしは社交的な人間と付き合いたいのだ」
「気が変わったので、カチェリーナ様はあの子の部屋で暮らしてもらいます。同類として学ぶところが多いと思います」
「そりゃない。それだけはありえない」
カチェリーナは涙を流しながら訴えた。先ほどはグルーシェンカの部屋で暮らすという話だったはずだ。生まれて初めてお泊まりさせて貰うという歓びで一杯だったのに、なぜナスターシャと同室ということになるのか。だが抵抗虚しく、カチェリーナはナスターシャと同室にされた。いかにもガサツで、何かやるたびに物音をさせる少女だった。そこには優雅さの欠片もなかった。そのナスターシャが起き上がり、カチェリーナに近づいてきた。
「おまえなんか死ねばいいのに」
カチェリーナは絶句した。言い返す言葉が見つからないまま、ナスターシャは背を向けベッドに寝転がった。このゴミとどうやって生活すればいいのかカチェリーナは途方に暮れた。







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