カチェリーナはグルーシェンカの部屋に行った。
「あのナスターシャって子、どうにかならないのか。親から虐待に合ってるんだろ。あまりにも不憫だ。親は相当なワルなんだろうな」
「あの子の両親は普通ですよ。人格者ではないし、極悪人でもない。平均的な人間なんです。可愛い子どもなら虐待などせずに可愛がるでしょう」
「そんなの本当の親ではない」
親だったら、自分の子どもが可愛いのが当然である。ナスターシャのような陰気な子どもだって可愛がるべきだ。
「こどもが可愛いというのは幻想です。可愛くないこどもは確実にいます。特に社交性がないこどもは、親としても可愛がれないです。ブスでもかわいげがあるとか、そういうのならいいのですが、ナスターシャは無理です」
「そんな世知辛いものだろうか」
「カチェリーナ様の両親だってカチェリーナ様を可愛がってないでしょう。わたしはカチェリーナ様の生まれつきの知能はかなり高いと思っています。15年間ゴロゴロしていたので、15年間努力して大学を卒業したわたしとは知力の差がつきましたが、生まれつきの知能ならカチェリーナ様の方が優秀です」
「確かに家族からは疎まれていたけどな」
だからこそ家族はカチェリーナを置いてラスベガスに豪遊に行ったのだし、そこで殺された。カチェリーナはその一報を聞いて大喜びしたわけだ。
「カチェリーナ様の御家庭はソビエト共産主義の崩壊とか、チェルノブイリ原発事故に乗じて汚いやり口でボロ儲けしたわけです。マフィア同然の家であり、到底知性を重んじるような文化資本はありませんでした。だから特別な美貌や知性に恵まれているカチェリーナ様が疎まれるという悲劇が起こったのです」
「それがどうしたんだよ」
「カチェリーナ様の場合は、御家庭がおかしいのです。他の環境なら、すごいチヤホヤされてます。ナスターシャは、どこの家庭でも疎まれる子どもです。ナスターシャを可愛がれるのはマザーテレサくらいでしょう」
「ナスターシャはおまえの親戚だろう。他人事ではないのだから、ここの家に置いてやったらどうだ。かなりの豪邸だし、空き部屋もあるだろう」
「うちの両親がナスターシャを嫌ってるのです。今回ナスターシャが泊まりに来たのも、カチェリーナ様のために合宿をするという名目で、なんとか可能になったのです。だから合宿が終われば、ナスターシャは親元に送り返されます」
「そうなのか」
「うちの両親はカチェリーナ様のことはすごい気に入っています。カチェリーナ様を嫌ってるのは、カチェリーナ様の御家族くらいです」
「幸いなことに全員死んだけどな。ところでナスターシャはプログラミングの才能があるんだろ」
「ああ見えて知力は高いです。でも今時プログラミングの才能なんて珍しくない」
「ナスターシャはわたしの城においてやるよ。700くらい空き部屋があるから問題ない」
「わたしが困ります。あの城の近くにはわたしの修道院があります。わたしもカチェリーナ様をよく訪問する」
「だったらナスターシャにとっていい環境だな。ナスターシャはグルーシェンカを気に入っているから、会う機会がたくさんあるのはいい」
「それが嫌なんです。これは社交性のある人間特有の悩みです。ぼっちが全面的に依存しようとしてくるんです。友達が全然いないようなゴミがわたしの後を金魚の糞のように付いてくるという現象が発生するのです。その子にとって、わたしが世界のすべてという状態になる。実際、ナスターシャがカチェリーナ様に暴言を吐いたのも、わたしを独占しようとしたからでしょう。わたしは虐待死などを懸念してナスターシャを保護しているだけで、本当はああいうゴミには関わりたくないのです」
「ナスターシャがそれを知ったら悲しむだろうな」
「知ったでしょうね。ドアの外で聞いてるみたいですから」
グルーシェンカがそう言うと、廊下を走り出す音が聞こえた。どうやら今までの会話をナスターシャが聞いていたようである。
「わかってて今の話をしたのか。残酷だな」
「カチェリーナ様も、ナスターシャのひどさはご存じのはず。一晩過ごしてすごい嫌な思いをされたはずです。それは否定できないはずです。だから二発も全力の平手打ちをしたわけです」
そう言われると、カチェリーナも反論は出来なかった。ナスターシャの顔面を全力で殴ったことで気が晴れたが、そうでなければ怨恨でもやもやしていただろう。







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