グルーシェンカが名門貴族だというのはわかりきっていたが、カチェリーナはその階級格差を如実に感じざるを得なかった。いくらカチェリーナが大富豪で超美少女だと言っても、人間としてみればグルーシェンカの方が明らかに格上なのだ。文化的なバックグラウンドがまったく違うのである。カチェリーナは居住まいを正してグルーシェンカに教えを乞おうと思った。
「おまえはわたしをすごい嫌っているようだが、しかし、言っていることは筋が通っている。わたしの人生観も含めていろいろ話し合いたいのだが」
「いくらでも話し合います。よければ泊まっていってください。夜を徹して語り合いましょう」
「では、根源的な問題に回答してもらおう。わたしは確かに15年間ゴロゴロしていた。でもそれがなぜ悪いのか。説明を求めたい」
「ゴロゴロしてるのは楽しいですか」
「楽しいと言えば楽しいな」
カチェリーナは曖昧に答えた。少なくともゴロゴロしてると偏頭痛が楽になるので、気分はよいわけだ。
「でも本当にエンジョイしてないと思うんです。決して至福の時間とは言えないはず。カチェリーナ様は不完全燃焼でゴロゴロしているわけでしょう」
カチェリーナは頷くしかなかった。ゴロゴロすると楽だからゴロゴロしてるだけで、本当にそれが素晴らしい時間のわけはない。
「最初から休んだらダメなんです。わたしだって何時間も勉強したら疲れるので寝転がる。でも、それは頑張った後だから休んでいいんです。頑張ってないのに休んでどうするんですか」
確かにカチェリーナは目が醒めてから何もせず、そのままシーツにくるまってゴロゴロしている。何も言い返す余地はなかった。
「サラリーマンの人が仕事で頑張って、退社してビールを飲むのはいいんです。頑張ったのだから、息抜きが必要です。でも無職が昼間からビール飲んだらダメでしょう。仕事しないで昼間から呑むビールが本当にうまいわけがない」
「指摘は的確だと思う。この際だからもっと言ってくれ」
「完全燃焼してから寝転がれということですよ。スポーツを全力でやったら休んでいい。カチェリーナ様は運動出来ないでしょうから、読書でもいい。頑張って何時間も本を読んで、それから休んでください。カチェリーナ様は親から愛されず、生まれてから友達がひとりもおらず、偏頭痛もあり大変だとは思いますが、そういう苦痛は頑張った結果の苦痛じゃないんですよ。ゴロゴロして癒されるものではないです。不遇を呪って苦しんでも得るものはないです。本気で努力して苦しんでください」
極めて真っ当な意見だったので、カチェリーナは頭を垂れるしかなかった。
「やる気が出るまでゴロゴロしてるのがカチェリーナ様のようなクズにありがちなんです。それが不完全燃焼の人生の根本的な原因です。やる気がなかろうと、まずは動き始めて、いろいろ頑張って疲れたら寝転がればいい」
「まさにその通りだと言わざるを得ない」
何もせず、最初から休んで、ゴロゴロして、不完全燃焼のうちに一日が終わる。その繰り返しがカチェリーナの十五年間だったのだ。







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