修学旅行でどこのグループにも入れなかったのはカチェリーナにとって大きなショックだったが、グルーシェンカがフランス旅行に誘ってくれたので痛みはかなり和らいだ。これがなかったら、完全に心が折れて、登校することすら無理だったかもしれない。ホームルームの前にカチェリーナが席について予習をしていると、女の子四人組が近づいてきた。そのうちの一人のソーネチカという少女が話し掛けてきた。
「修学旅行の件ですけど、もしよかったらわたしたちの班に入りませんか」
これはカチェリーナの予期してないことだった。反応することが出来ず、頭の中が真っ白になった。身体が硬直し、パニックになりそうだった。
こうやって回答を求められて迷った時は「今すぐ決めなくてもいいよね」と言うようにグルーシェンカからアドバイスされていた。
「今すぐ決めなくてもいいよね」
カチェリーナは辛うじて言った。
これでひとまず回答を保留し、時間を稼ぐのだ。
「ええ、もちろん。ゆっくり考えてください」
ソーネチカは上品そうに笑った。
これでカチェリーナにも余裕が出来た。身体の力を抜いて、慌てずにじっくりいかなければならない。この子はカチェリーナが密かに目を付けていた少女である。清楚で物腰が柔らかで、なかなかの優等生である。お嬢様学校にしか存在しないタイプだ。修学旅行の件はともかく、友達になれるならなっておきたい相手である。
「そうだなあ。せっかくだからお近づきにはなりたい。わたしの城に遊びに来てくれないだろうか」
「カチェリーナ様はお城からこの学校に通われてるんですか」
「いや、この近くのグルーシェンカという女のところに居候してる」
「グルーシェンカさんって、あの天才姉妹の妹さんの方ですか」
「よく知らないが、リザヴェータという姉は天才的に絵が上手い」
「あの姉妹と交流があるなんて、すごいですね」
なんか後ろにいる三人の女の子も感心しているようだった。カチェリーナが思っている以上にグルーシェンカはすごい存在らしかった。グルーシェンカからいつも痛めつけられているので心境は複雑だったが、自慢に思うところもあった。
「修学旅行行かない代わりに、グルーシェンカとフランス旅行に行くことにしたんだ。ベルサイユ宮殿の側にある五つ星ホテルに泊まる予定で」
「グルーシェンカさんとそこまで深い付き合いがあるなんて、わたしたちとは住む世界が違いますね。フランス旅行の予定があるなら、修学旅行は無理ですね」
「いや、フランス旅行はいつでも行けるのでキャンセルする」
カチェリーナは慌てて言った。この千載一遇のチャンスを逃しては友達など出来そうにない。特にこのソーネチカとは是が非でも友達になりたい。
「じゃあ、とりあえず班に入れておきますね」
「いいのかな。わたしなんかで」
「グルーシェンカさんにはお会いしたことがあるのですが、あのような立派な方と親密に交流されているカチェリーナ様が悪い人のはずがありません」
そこでホームルームが始まったので、ひとまず会話は終わった。この先うまくやれる自信はまったく無かったが、きっかけは作ったと言える。
カチェリーナはメールを打ってグルーシェンカに今のことを報告した。するとさっそくグルーシェンカから返信が来た。
「一度しか会ったことないんですが、ソーネチカは医者のお嬢さんだと思います。カチェリーナ様が好感を持たれたのなら、是非友達になるべきでしょう。ソーネチカだけと会話して、残りの三人を無視するのは避けてください。放課後うちに連れてきても構いません。そのあたりの流れは自分で考えて判断してください」
なるほど、とカチェリーナは思った。人気者のソーネチカだけに食い付いても他の三人はいい気がしまい。ソーネチカのことで頭が一杯ではあるが、後ろの三人にも配慮しておこうと思った。







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