2013.10.31
勉強しても女にモテない
カチェリーナはグルーシェンカと義兄弟の盃を交わしたわけである。チェ・ゲバラがカストロと出会ったような瞬間であり、これから二人が世界史的な人物として革命を起こしていく未来が予想された。しかし女に対して並々ならぬ関心を持っているカチェリーナは「義兄弟の契りを交わしたのだから肉体の契りも交わすべきだ」と主張した。カチェリーナは知性の高い少女であるが、女のためには理性を失ってしまうのである。グルーシェンカはカチェリーナに殴る蹴るの暴行を加えたが、それによりカチェリーナは意識不明の重体に陥った。グルーシェンカの両親はこの騒動に気づいて腰を抜かしたが、グルーシェンカはカチェリーナなんぞ死んだ方がいいと長広舌を振るい、まったく悪びれることなく飄々と海外に旅立ったのである。
やがてカチェリーナは病院のベッドで目を醒ました。普段から半病人でいつ死んでもおかしくない人間のわりには意外と生命力があるようだった。カチェリーナは早速勉強を開始した。もはや自分は勉強するしかないと思ったからである。グルーシェンカがいなくなったので、代わりにグルーシェンカの姉のリザヴェータが勉強を教えてくれることになった。以前カチェリーナの漫画家志望を、天才画家であるリザヴェータが打ち砕いたことがあり、カチェリーナは根に持っていたが、他に適当な相手が見当たらなかった。リザヴェータは17歳で大学生、要は飛び級なのだが、グルーシェンカのような突出した知力はないながらも、かなり高い学力の持ち主だった。普段は大学の寮に住んでいるが、休みの日には帰宅しカチェリーナの面倒を見ることになった。リザヴェータは穏やかでマイペースな優しい性格であり、カチェリーナのことを崇拝していた。そのため、カチェリーナはリザヴェータの絵の才能への憎悪を辛うじて抑えることが出来た。
療養している間にモスクワへの修学旅行が行われたので、友達のいないカチェリーナは気まずい思いをしないで済んだ。ソーネチカは時々カチェリーナのお見舞いに来たが、これは彼女の育ちのよさから来る親切であり、カチェリーナと本当に仲良くなる兆しは見えなかった。この療養中にかなりの学力を身につけカチェリーナは学校に復帰した。ソーネチカが「よいお天気ですね」くらいの挨拶はしてくれるので、完全な孤独というわけではなかったが、友達がいないことに変わりはないようだった。授業が簡単すぎるようになったので、カチェリーナは自らの学力の向上を実感したが、だんだん学力の価値への疑念が湧いてきた。明らかに学業優秀になり、それはよかったが、友達が出来ないし、人気者にもならない。
「勉強できるようになったのに女にモテない」
カチェリーナはリザヴェータに不満を漏らした。自分はアーティストを断念して、得意な勉強に専念しようと決意したわけだ。それが運命だと思い決断したのだ。学者肌と言われたので、そういう方向性を目指してきた。実際、そういう適性は高いようで、勉強は難なく出来るようになった。だが、その結果として、全然女にモテない。やはりアーティストの方が、モテるに決まっている。
「カチェリーナ様の外見だと、世界中のどんな男性でも結婚できると思いますわ」
確かに15歳のカチェリーナに世界中の金持ちから求婚が来るのだが、カチェリーナ自体が大富豪なので、そういうものへの憧れがない。
「男とかどうでもいいんだよ。わたしはあの学校のお嬢様に憧れていて、せっかく入学したのに、目の前の獲物が食えないというストレスがすごいあるわけだ」
いろいろ考えたあげく、カチェリーナはギターを買った。ギブソンレスポールのすごい高いギターである。これを弾きこなせれば、アーティストとして認められ、女にモテるに違いない。しかしカチェリーナは大富豪であるにもかかわらず、親からネグレクトされていたので金持ちの少女ならデフォの素養であるピアノさえ習っていない。レスポールを抱えてアーティストを気取ってみたが、元より不器用で、ピアノのお稽古もやってないとなれば、まともな音は出せそうになかった。
「ギターならわたしが教えましょうか」
リザヴェータがやってきた。
「おまえ弾けるのかよ」
「昔は弾けました」
そしてリザヴェータはギターを弾き始めた。これがまたしても天才の所業だった。これだけ弾けたら、魂を売り渡してもいいというくらいの腕前なのである。リザヴェータの絵の才能に嫉妬しているカチェリーナとしては、痛恨のダメージを受けた。
「小さい頃から音楽とかやってたんだろうな」
「ピアノとヴァイオリンはやってました。絵の方に集中することにしたので、今は音楽はやってません」
こういう育ちのいい連中は、小さい頃からピアノを習ったりしていて卑怯だとカチェリーナは思った。カチェリーナだって、親からネグレクトされてなければ、いろんな習い事をして、それでチヤホヤされたに違いない。リザヴェータへの嫉妬と、親への憎悪でカチェリーナは倒れ込んだ。
「もう希望が無くなった。ギタリストとして女にモテるという夢は断たれた」
「なんでそんなにモテたいんですか」
「わたし独特の認知の歪みだというのか。モテるためなら何でもするというのが世の中の連中の考えだろ」
「確かにそうです。世間の普通の人達はモテることだけを考えてます。でもカチェリーナ様は特別な知性をお持ちです。グルーシェンカでさえ、カチェリーナ様の方が知能は高いと言ってるくらいですから、いずれは天才的な学者になれますわ」
そんなことを言われても慰めにはならなかった。運動も出来ず、アーティストにもクリエイターにもなれず、机に齧り付いてガリ勉してるだけの人生なんて耐えられそうになかった。
やがてカチェリーナは病院のベッドで目を醒ました。普段から半病人でいつ死んでもおかしくない人間のわりには意外と生命力があるようだった。カチェリーナは早速勉強を開始した。もはや自分は勉強するしかないと思ったからである。グルーシェンカがいなくなったので、代わりにグルーシェンカの姉のリザヴェータが勉強を教えてくれることになった。以前カチェリーナの漫画家志望を、天才画家であるリザヴェータが打ち砕いたことがあり、カチェリーナは根に持っていたが、他に適当な相手が見当たらなかった。リザヴェータは17歳で大学生、要は飛び級なのだが、グルーシェンカのような突出した知力はないながらも、かなり高い学力の持ち主だった。普段は大学の寮に住んでいるが、休みの日には帰宅しカチェリーナの面倒を見ることになった。リザヴェータは穏やかでマイペースな優しい性格であり、カチェリーナのことを崇拝していた。そのため、カチェリーナはリザヴェータの絵の才能への憎悪を辛うじて抑えることが出来た。
療養している間にモスクワへの修学旅行が行われたので、友達のいないカチェリーナは気まずい思いをしないで済んだ。ソーネチカは時々カチェリーナのお見舞いに来たが、これは彼女の育ちのよさから来る親切であり、カチェリーナと本当に仲良くなる兆しは見えなかった。この療養中にかなりの学力を身につけカチェリーナは学校に復帰した。ソーネチカが「よいお天気ですね」くらいの挨拶はしてくれるので、完全な孤独というわけではなかったが、友達がいないことに変わりはないようだった。授業が簡単すぎるようになったので、カチェリーナは自らの学力の向上を実感したが、だんだん学力の価値への疑念が湧いてきた。明らかに学業優秀になり、それはよかったが、友達が出来ないし、人気者にもならない。
「勉強できるようになったのに女にモテない」
カチェリーナはリザヴェータに不満を漏らした。自分はアーティストを断念して、得意な勉強に専念しようと決意したわけだ。それが運命だと思い決断したのだ。学者肌と言われたので、そういう方向性を目指してきた。実際、そういう適性は高いようで、勉強は難なく出来るようになった。だが、その結果として、全然女にモテない。やはりアーティストの方が、モテるに決まっている。
「カチェリーナ様の外見だと、世界中のどんな男性でも結婚できると思いますわ」
確かに15歳のカチェリーナに世界中の金持ちから求婚が来るのだが、カチェリーナ自体が大富豪なので、そういうものへの憧れがない。
「男とかどうでもいいんだよ。わたしはあの学校のお嬢様に憧れていて、せっかく入学したのに、目の前の獲物が食えないというストレスがすごいあるわけだ」
いろいろ考えたあげく、カチェリーナはギターを買った。ギブソンレスポールのすごい高いギターである。これを弾きこなせれば、アーティストとして認められ、女にモテるに違いない。しかしカチェリーナは大富豪であるにもかかわらず、親からネグレクトされていたので金持ちの少女ならデフォの素養であるピアノさえ習っていない。レスポールを抱えてアーティストを気取ってみたが、元より不器用で、ピアノのお稽古もやってないとなれば、まともな音は出せそうになかった。
「ギターならわたしが教えましょうか」
リザヴェータがやってきた。
「おまえ弾けるのかよ」
「昔は弾けました」
そしてリザヴェータはギターを弾き始めた。これがまたしても天才の所業だった。これだけ弾けたら、魂を売り渡してもいいというくらいの腕前なのである。リザヴェータの絵の才能に嫉妬しているカチェリーナとしては、痛恨のダメージを受けた。
「小さい頃から音楽とかやってたんだろうな」
「ピアノとヴァイオリンはやってました。絵の方に集中することにしたので、今は音楽はやってません」
こういう育ちのいい連中は、小さい頃からピアノを習ったりしていて卑怯だとカチェリーナは思った。カチェリーナだって、親からネグレクトされてなければ、いろんな習い事をして、それでチヤホヤされたに違いない。リザヴェータへの嫉妬と、親への憎悪でカチェリーナは倒れ込んだ。
「もう希望が無くなった。ギタリストとして女にモテるという夢は断たれた」
「なんでそんなにモテたいんですか」
「わたし独特の認知の歪みだというのか。モテるためなら何でもするというのが世の中の連中の考えだろ」
「確かにそうです。世間の普通の人達はモテることだけを考えてます。でもカチェリーナ様は特別な知性をお持ちです。グルーシェンカでさえ、カチェリーナ様の方が知能は高いと言ってるくらいですから、いずれは天才的な学者になれますわ」
そんなことを言われても慰めにはならなかった。運動も出来ず、アーティストにもクリエイターにもなれず、机に齧り付いてガリ勉してるだけの人生なんて耐えられそうになかった。
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