カチェリーナはリザヴェータにとても可愛がられていた。誰からも愛されずに育ったカチェリーナにとって、心酔しているリザヴェータに可愛がられるのはとても幸せなことだった。だが、二歳年上のリザヴェータとは、10代における二歳違いの重み、もしくは、情緒に欠陥があるカチェリーナの問題もあって、大人と子どもの関係のようになってしまう。二歳違うだけなのだが、かなり年が離れてるような関係になっており、同年代の友達にはなりそうになかった。

そんな折、何の連絡も無しにグルーシェンカが帰ってきた。
カチェリーナは玄関に出迎えに行った。
「カチェリーナ様とリザヴェータ姉さんがご結婚されるそうで」
「いや、それはやめにしたので」
カチェリーナは事の顛末を話した。
「なるほど。勝手に結婚を決めるとか、人の意志を無視した行為はよくないです。ましてや同性婚。しかしようやくカチェリーナ様がなついたわけですから、リザヴェータ姉さんは部屋で枕を抱きしめてニヤニヤしていたはずです」
「そうなのだろうか」
「カチェリーナ様はすごい可愛がられてるでしょう」
「あの人はすごい優しい人だな。世界最高の女性だ」
「リザヴェータ姉さんは家にいますか」
「いや、大学が休みの時だけこっちに来るので、今日はいない」
それからカチェリーナはグルーシェンカの動向について尋ねることにした。暗殺されるとか言って、いきなり海外に飛んだわけである。
「おまえどこで結婚の話を知ったんだよ。連絡も取れない状態にしてたじゃないか」
「カチェリーナ様は結婚式の招待状をローマ法王に送りましたよね。あれを法王に見せて貰ったんです。おかげで同性婚の是非について、法王と長時間議論することになりました」
「おまえローマ法王と話せる立場なのかよ」
「カチェリーナ様の名前を出したら会えたのです。カチェリーナ様はウクライナのカトリック教会に巨額の寄付をしているので、法王もご存じでした」
「わたしの名前を勝手に利用したのか」
「さらに寄付を増やすと約束しておきました。いずれ法王とお近づきになれると思います」
「金はいくらでもあるから構わないが、人の意志を無視して勝手なことしやがって。そういうのを想像力がないと言うんだ」
カチェリーナは憶えたての言葉を使ってグルーシェンカを批判した。
「ああそうですか。カチェリーナ様が一面識もないローマ法王に招待状を送ってきたので、法王と人脈を作りたいのだろうと想像したのです。だからそういう方向で話をまとめたのですが、わたしの想像力が足りなかったようです。この話はなかったことにしておきます」
「いや、人脈を作れるものなら作っておきたい」
カチェリーナは認めざるを得なかった。
カチェリーナはマフィアのような親が残した巨額の遺産で生きているので、まったくリスペクトされていない大富豪である。まともな方法で稼いだ金ではないので引け目もある。だから、カトリックに浄財を寄付することで、尊敬を勝ち得ようとしていたのだ。名誉が目当てでカトリックに寄付しているのだから、巨額の寄付をローマ法王に感謝されるなら、たくさん寄付してきた目論見が結実するということである。
「ところで、おまえが暗殺されるという話はどうなった」
「暗殺云々は大袈裟に言ったんです。ウクライナで影響力を持ちすぎたので、海外で影響力を拡大することにしたのです。海外で有名になってしまえば、ウクライナで人知れず消すとか、やりづらいですから」
カチェリーナにはよくわからない話だったが、グルーシェンカは天才的な頭脳の持ち主であるのに加えて悪魔的なソーシャルスキルもある。殺したいと思う人間は当然いるのだろう。
「カチェリーナ様は女の方はどうなりました。食えましたか」
「いや、全然。あのお嬢様学校はわたしのストライクゾーンに入る子が多すぎるので生殺し状態だ」
「友達は出来ましたか」
「憧れの学校に入ったはいいが、女は食えず、友達もいないという絶望の状態だ」
「リザヴェータ姉さんは聖女であり博愛主義者ですから、カチェリーナ様のような情緒欠陥のゴミでも可愛がってくれるでしょうが、一般人は露骨に敬遠するわけですね」
「この問題は解決しなければならない」
最近のカチェリーナはリザヴェータに可愛がられているので幸せではあるが、誰からも愛されないホームレスがマザーテレサに施しを受けているようなものだ。
「あの学校で寝てみたい相手はいますか」
「ソーネチカだな。一応挨拶はしてくれる。天気の話くらいはするが、すぐに後ずさりして去っていく」
「ソーネチカは医者の娘で育ちがいいですからね。情緒欠陥のゴミだと気づきながらも声だけは掛けてくれるんでしょう。でも生理的に受け付けないのだと思います」
「だろうな」
「ソーネチカをどうしても抱きたいですか」
「どうしてもやりたい」
「わかりました。わたしが交渉してみましょう」
グルーシェンカが立ちあがると外套を着込んだ。そしてソーネチカのところに出掛けていった。
カチェリーナは落ち着かない状態ながらも勉強しながら待っていた。グルーシェンカは悪魔的なソーシャルスキルの持ち主である。普通なら出来ないことでも可能にしてしまうので期待はしていた。
数時間経った後、グルーシェンカが帰宅した。
「どうだった」
カチェリーナは玄関まで走って尋ねた。
「ソーネチカはカチェリーナ様とは寝たくないそうです」
「だろうな」
カチェリーナはがっくりと肩を落とした。
「でもわたしとは寝ました。すごくいい女でしたよ」
そう言うと、グルーシェンカはiPhoneを取りだした。カチェリーナはおそるおそる手に取り覗き込んだが、そこにはソーネチカの破廉恥な画像が何枚もあった。カチェリーナは絶句して震えるしかなかった。グルーシェンカの悪魔的な行為は過去に多々見てきたが、これは痛恨の極みだった。精神的な殺戮と言ってもよかった。
「カチェリーナ様は勘違いされているようですが、カチェリーナ様ではソーネチカを絶対に落とせないと思うんです。だからわたしが城壁を破壊したのです。後はお姫様の寝室に入るだけです。わたしが調教してから、カチェリーナ様にソーネチカをお渡しします」
「ではわたしもソーネチカを抱けるのか」
「そのためにわたしがわざわざ出掛けて、身持ちの固い少女を落としてきたのです。一週間くらいでカチェリーナ様の寝室にお届け出来ると思います」
「なるほど、ううむ」
カチェリーナは混乱していた。
ソーネチカは清純そうで品がよく、細かいところに神経が行き届いている凛とした少女だった。そういう清楚な花を摘み取りたかったのに、中古を渡されるのは釈然としない。
「お気持ちはわかります。カチェリーナ様御自身で攻略したかったのでしょう。でもカチェリーナ様のソーシャルスキルでは100年掛かっても無理なんですよ」
「これはさすがに頭痛がしてきた。部屋で休ませてくれ」







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