2014.01.13

哲学者は長命

ニーチェは哲学者らしからぬ短命だった。55歳までは生きているが、45歳で発狂しているので、それ以降に書かれるはずだった主著の計画はご破算になったのである。高名な哲学者は肉体に恵まれず虚弱ながらも、意外と健康だったりするので、不健康で苦しんでいたニーチェは特殊な部類である。発狂が無く健康であったなら、さらにグレードアップした著作を著していた可能性が高い。

哲学者・思想家の寿命はやたらと長く、簡単に列挙するとこんな感じである。

ソクラテス 70歳
プラトン 80歳
アリストテレス 63歳
アダム・スミス 67歳
デカルト 53歳
ショーペンハウアー 72歳
ヴォルテール 83歳
スピノザ 44歳
ライプニッツ 70歳
ホッブズ 91歳
カント 79歳
ルソー 66歳
ジョン・ロック 72歳
ベンサム 84歳
キェルケゴール 42歳
ウィトゲンシュタイン 62歳
ヘーゲル 61歳
フッサール 79歳
ハイデガー 86歳
マルクス 64歳
フロイト 83歳

哲学者・思想家はあまりにも長生きが多すぎるので、ギリシャ時代は年齢の数え方が違っていたという指摘もある。とはいえ、近代以降の哲学者もやたらと長生きである。音楽家は頭の中に旋律が思い浮かべば完成なので、20歳かそこらで天才性をいかんなく発揮することが可能だ。音楽家の早熟性に対して、哲学者は晩熟であり、40歳とか50歳がピークであるのが普通である。カントが純粋理性批判を出したのは57歳だが、その前の10年くらいは沈黙している。47歳から10年掛けて純粋理性批判の構想を練ったのである。その57歳以降にカントの主著の多くは書かれる。仮に56歳で死んでいたら、さほど評価は受けていない。哲学者はやたらと独身が多いことで知られる。ハイデガーやヘーゲルは結婚しているが、独身であるのが普通である。哲学者は人類や宇宙の根源について考える生き物である。やはり結婚するとなれば、日常性に忙殺されて、人類とか宇宙について考える暇がないのだろう。奥さんと子どもがいるのに、書斎で書物に齧り付いて宇宙のことばかり考えているというのは無理である。また哲学者は波瀾万丈の人生であることも少ない。適度に裕福な家庭に生まれ、さほど困窮はせず、自分の人生への欲は強くなく、俗事に忙殺されることなく、地味につつましく暮らすのがパターンだ。ハイデガーが「存在と時間」を刊行したのは37歳の時である。ハイデガーは20代の時に結婚しているから、これは珍しい事例だ。本来なら、ここからさらにグレードアップできる年齢なのだが、あまりにも「存在と時間」の評判がよかったために、上巻を出しただけで終わってしまった。現在われわれが読んでいる「存在と時間」はあくまで上巻であり、下巻はお蔵入りとなって消えたのだ。ハイデガーは86歳まで生きたが、守りに入ったことで長命を生かし切れなかった。結婚を諦めた独身のおっさんが人類について考えを巡らすのが哲学なのである。ハイデガーは37歳の「存在と時間」だけで不朽の名声を得たが、これでスターになってしまったので、孤独なおっさんとして人類について考えるのは無理になったのだ。人間は35歳になると新しいことが憶えられなくなると言うが、天才哲学者が主著を出すのはだいたい35歳以降なのである。脳が若さを失うことで、過去や歴史に思いを巡らせ、人類の歴史全体を考えられるようになる。脳が若いと現在進行形の事象への反応がよすぎて、歴史に深い関心を持つのが難しい。35歳を過ぎると思考力が低下すると思われがちだが、現在への瞬発力が無くなるだけであり、作曲家の才能は涸れ、プログラマーは引退を迫られるとしても、人類や歴史への考察力は増加することもある。







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