その時代を支配する言葉があるわけである。ひとつのフレーズが価値観と思考を支配するのだ。人間は、言葉を自由に組み合わせて、自由に思考しているということはない。あくまで言葉に引っ張られながら、その決められた路線を行くのである。お決まりの言葉から、お決まりの思考が出てくるわけだ。言葉を共有するというのは、思考(価値判断)の共有なのである。

数年前までは「自己責任」という言葉がやたらと使われていた。このワンフレーズで事足りるのだ。この「自己責任」という言葉について解説の必要はないだろう。ワンフレーズの強さである。1990年代には「援助交際」という言葉が流行った。女子高生が気軽に売春するのを肯定する単語である。今日では「児童買春」と言われ、売春少女を被害者と規定し、警察はこれを凶悪犯罪と見なし(少女を買った大人を)地の果てまで追い詰める。そこらの傷害事件よりは、はるかに熱心に捜査されるのだ。言葉の呼び換えで価値観を変更するのが、世界の本質である。援助交際と児童買春は同じ事象を指し示しているが、それぞれの言葉から生み出される思考は異なるのである。

言葉狩りは、戦略的にかなり効果的なのである。言葉は思考を含んでいる。思考を変えさせるためには、言葉を禁止し、別の言葉に変更することが重要である。言葉は価値判断を担っているので、言葉を換えなければ価値判断も変わらない。言葉を換えずに思考を変えさせるとなると、かなりの難作業である。

軍国主義の時代は、「君側の奸」という言葉がキーワードであった。この言葉の流行が天皇の側近達を震え上がらせた。天皇は崇拝するが、天皇の側近は奸計を巡らす逆賊であるから、テロで殺すべきという考えである。昭和天皇から信頼されればされるほど逆臣としての度合いが高まり、テロのリスクが上がる。下級武士が天皇の側近になるというのが明治維新だったため、誰もが皇民であり、誰でも天皇の側近になりうるという世界の常識ではあり得ない発想が生まれた。天皇の側近(君側の奸)を殺して成り上がろうという思考が本当に実行されたのが2.26事件である。

言葉を流行らせることで世の中はコントロール出来るのである。かつては「搾取」というワンフレーズが多くの革命家を作り出し、マルクス主義という怪物が暴れ回ったのだが、今日ではとても使いづらい。非正規の賃金は需要と供給で決まるが、正社員の賃金は下がらないし、窓際でも解雇されることはない。需要がなくなった正社員の賃金は保護される。窓際の正社員が非正規労働者を搾取しているとも言える。非正規の賃金を出来るだけ安くすることで経済を成り立たせているのは問題がありそうだが、「搾取」という言葉は使いづらい。だから「自己責任」として片付けられてしまう。

おそらく「同一価値労働同一賃金」というフレーズが、同じような仕事なのに非正規の賃金が安すぎる状態を救うと思う。同じ仕事は同じ賃金という価値観が広まれば、非正規雇用の待遇がおかしいということになる。だが「同一価値労働同一賃金」という言葉を流行らせても権力者側のメリットがない。言葉を流行らすことが出来るのは媒体を牛耳っている人間だけである。グーグル検索の上位が麻生将豊と西村博之のグループに占拠されてる現状では、ネットも手詰まりである。

日本人が一億三千万人いるとしても、ほとんど全員を知らないわけである。知らない人に話し掛けるのはタブーであるし、知らない人に伝達する手段はほとんどないのである。だから流行り言葉がわれわれの中に根を張り支配する仕組みが出来上がる。ワンフレーズでいとも簡単に操られるのである。







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