家庭環境による著しい格差というものを考えるに、家庭環境の再分配というのがふと思い浮かんだのだが、なかなかこれも難しい。子どもはインセストタブーで守られている。実の父親であれば娘を犯すことはないであろうし、実の兄弟であれば、姉妹を犯すこともあるまいというインセストタブーこそが家族を成り立たせている。家庭環境を再分配するとなると、赤の他人の子どもを育てることになるから、性的に犯すことは多々あるであろう。

近親相姦と言えば、ルネサンス期のルクレツィア・ボルジアが想起される。ルクレツィアが近親相姦をしていたというのは、最初の夫がそう告発したのだが、離婚で揉めている関係から出てくる話を素直に信じるわけにもいかない。とはいえ、ローマ法王の娘であるルクレツィアの近親相姦というのは、真偽が疑わしいにもかかわらず、ルネサンス期の性的乱脈の象徴的な出来事として記憶されている。ルクレツィアが生まれたのは1480年であり、日本ではだいたい応仁の乱あたりで、守護大名が滅んで戦国時代に向かう頃だが、イタリアではレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452年生まれ)やミケランジェロ(1475年生まれ)の時代である。ルネサンス時代は文化が爛熟すると同時に、性的にはかなり奔放であったため、現代の感覚では考えられないことがあった。ルクレツィアはローマ法王の娘とは言っても愛人の腹から出てきた娘であるし、そもそもこのローマ法王であるロドリーゴも金で法王の地位を買ったのだから、法王庁の腐敗の問題も含め、噂を立てられやすい存在であった。長兄の怪死事件や、毒殺に長けた次兄にしても、妹への執着が常軌を逸しており、すべての絨毯を緋色に染めてしまうこの一家では何があってもおかしくないと思わせるのである。これは決して近親相姦くらい何でもないという話ではあるまいし、むしろインセストタブーの強さから注目されるわけである。

性的なモラルは時代によって変動する。日本の1990年代の女子高生ブームを思い出せばわかることである。この当時の朝日新聞の論壇時評は宮台真司が担当しており、西部邁を徹底的に罵り、少女の性の解放を高らかに謳い上げたのである。やはり左翼が保守に出来る最大の嫌がらせはフリーセックスの煽動なのである。1990年代は地域共同体が崩壊し、隣に住んでいる人の顔を知らなくなったのに、携帯電話だけが普及し、インターネットが端緒に付いたばかりで未成熟だったから、都市化により情報が遮断されたという側面が大きく、エアポケットに陥っていた時代なのである。現在でも女子高生のスカートの長さは変わらないが、たいていはスパッツを履いているらしいので、性意識はかなり変わっているのである。

家父長制の中で娘を交換する仕組みもなくなっているから、インセストタブーが永遠とも言い切れないが、近親相姦が広範に広まることは考えづらい。あらゆる性的な規範が壊れ、神を見失った人間の倫理がどこまで蹌踉めいても、なかなか近親相姦までは至らない。乱杭歯のように無差別に繁茂していく人間の無軌道な性衝動も、身内とのセックスだけは吐き気がするのである。児童の貞操を絶対視するのは、実の娘を犯してみたいという無意識の願望を戒律に反転させた防衛機制と考えることも出来るが、欲に満ちた存在だからこそ人倫を語る必要があるのであり、快楽原則にゆだねるのが正義でもあるまい。心の奥底に欲望の痕跡があるから倫理が無意味という言説は誤謬であり、ごく普通の常識として、児童の貞操に配慮するべきなのだろうし、そうなると子育ては実親に任せるしかないのである。その結果として、実親の当たり外れの大きさに悩まされることになるのだが、これは仕方がないのである。財産の格差だけでなく、親をお手本として生きていくという決定的な問題もあるから、経済的再分配だけでは解決しない。チンピラみたいな芸能人が成り上がって大金持ちになっても、たいてい子どもの出来が悪いのは、いくら金があってもお手本が粗末だからである。育ちの悪さは不治の病であり、その悪癖はわれわれの肉体を終の棲家として居座るから、まさに死ぬまで治らない。社会のすべてがエリートというのも都合が悪いので、底辺層は必要とされ、その命が間引かれるわけではないが、あくまでガレー船の漕ぎ手として隷従を求められるのである。気づいたときには、すでに家庭環境に染め上げられており、その桎梏から逃れられず、これまでに述べた理由により、実親以外に育てられるわけにもいかないので、土壌に満ちている瘴気と猥雑な品性は人格の最深層まで根を張り、神が自分に似せて人間を創造したというエピソードの本当の意味に寒々とするしかないのである。







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