そう言えば、有村悠さんの問題で、なぜか看過されてきた問題があるのである。この人は、普通の人だと何か都合が悪いのであろうか、ということだ。この問題は深く問われておらず、中二病をこじらせているだけだと考えられてきた。子どもの全能感の延長で生きていると揶揄されるにとどまっている。

この世の中には、まかり間違っても普通の人にはなりたくないという変わり者が確実にいるのである。たとえば三島由紀夫の事例で考えてみよう。三島由紀夫は女好きだと思われるエピソードが皆無であるから、「仮面の告白」で書かれている同性愛者という設定は事実であろう。あの当時だと見合い結婚が普通だし、敗戦後の女余りの時代なら、東大卒の大蔵官僚というのは、いくらでも若くて美人の処女と結婚できたはずだ。それこそ道重さゆみちゃんクラスの女と結婚できても不思議ではない。大蔵官僚として道重さゆみちゃんを妻にすることを目の前にしたら、どのような大芸術家も筆を折って無名のエリート人生を受諾すると思うのだが、こともあろうに三島由紀夫という人間は大蔵省を早々と辞めて、文壇の片隅の無名作家として、「仮面の告白」を書き出したのだから、普通の人生が相当に耐え難かったと思われるし、本当に女に興味はなかったのだろう。のちに結婚はしているし子どももいるが、これはアリバイ工作である。今日ではセクシャルマイノリティーの権利主張が強いし、コンピューターの基礎を作りエニグマを解読したアラン・チューリングのように、同性愛者として逮捕され、青酸カリを塗った林檎を食べて死を遂げるようなことはそう起こるまいが、同性愛者の権利が確保された世界に三島由紀夫が生まれていたら、世界と何となく和解していたのであろう。

さて、有村悠さんが、やたらと普通の人として生きるのを拒むのは、本当は何かしら事情があるのかもしれないのである。それは決して語らないであろうが、何が何でも「普通の人」だけは受け入れられないという強硬な姿勢があるのだから、なにかしらマイナスをプラスに変えずにはいられない、という意志も感じられる。もちろんわれわれにその「マイナス」の正体はさっぱりわからず、想像も付かないので、自意識過剰を極めた人間だと思うわけだし、おそらくそういう理解にとどまるであろう。

卑近な例で言えばTehuなどは、実寸で二メートル近い不細工なわけであり、あれが普通の外見だったら、ああやって悪目立ちすることを目指すまい。これは非常にわかりやすい事例である。あの外見だと、悪目立ちする以外に何もないという思いこみが膨れあがっても不思議ではない。身長二メートルの普通の不細工として、たとえば公務員として平均以上の収入を得ながら女にはもてない人生を送るのは耐え難いのであろう。

やはり「普通の人」であるためには、地味に生きていて満たされることが必要である。地味な人生に強烈な違和感があるからこそ、特別な人生を目指そうとするわけである。普通の人であるからには、つまり不良品ではなく、それなりに標準的な水準にある必要がある。その人並みの人生さえ無理なら、何かしら下克上の願望を膨らませても不思議ではない。出来損ないだからこそ特別な人間を目指すという思考回路があり、これが人格障害の根源なのである。出来損ないであるからには、なにかしら選ばれた存在に違いないとでも思いこまなければ、この人生は耐えがたいものである。

また「普通の人」と考える基準が、実は平均より高いという問題もある。この社会では、特別な障害者でなければ健常者であると扱う。だからたいていは健常者なのだが、実質的なスペックが出来損ないだということはよくある。われわれが「普通の人」という場合、特段の欠陥が無く、全体的に平均程度のスペックが揃っていることを意味しており、なかなかこれがハードルが高い。「健常者」ならたいていの人が当てはまるが「普通の人」は難しい。欠点が見あたらないという部分を強調するなら、「普通の人」のハードルは意外と高いのである。

われわれはこの世界の居心地のよさ、もしくは居心地の悪さからして、なんとなく平凡さに誘導されることもあれば、何が何でも特別な人間にならなければならないという自意識を育てることもあるのである。有村悠さんが純然たる我が儘で特別な人間であろうとしている可能性は高いのだし、われわれが知っている材料ではそう判断するしかないのだが、普通の人だとまずいような事情があるのかもしれないわけである。常識人になろうという努力をするどころか、出来る限り非常識になろうと固執しているのであるし、普通の人になってしまうと極めて都合が悪いらしいので、普通の人間として生きたらまずい事情があるのかと勘ぐりたくもなる。とはいえ、ここはプライバシーの問題であるから、本人が口を閉ざしている限りは単なるわがままで自分が特別だと思いこんでいる状態だと考えるしかないのである。







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