日本人は一億三千万人いるが、お互いをほとんど知らないので、物語の共有で日本人というアイデンティティを自覚している。近代日本の建国神話は明治維新である。その根底にあるのは陽明学であり、王陽明は知らずとも、誰でも吉田松陰やその弟子は知っている。明治維新については、あの時代背景を考えれば、そもそも民主主義ではないから剣で人を斬るのもいいであろうし、織田信長の言動が非常識なのと同じで構うまい。これが時代背景を踏まえずに美化されるとなるとずいぶん困ったことになる。伊藤博文や山県有朋が明治の創業メンバーだとすると、この連中が消えたあたりで、問題が肥大してきたのである。伊藤博文や山県有朋は決して立派な人間ではあるまいが、それなりに国家のことは考えていたし、天皇を本気で崇拝していたわけではない。山県有朋が軍人勅諭を作ったのも、近衛兵が反乱を起こした竹橋事件(1878年)を受けて、徴兵制の強化、もしくは天皇への忠誠心を高めることが必要だと考えたからであり、理由もなく天皇を崇めたのではない。竹橋事件は西南戦争への恩賞の少なさに不満が噴出したのが原因だが、武士が退場して軍人に入れ替わったことで、新しい思想原理が求められた。この薬が何十年も後になってからだんだん効き過ぎることになる。大企業病というのはスラングであろうし、また、どちらかと言えば、大企業に入れば無難にやるだけで安泰ということであるから、それとはニュアンスが違うであろうが、何かしら、創業メンバーがいなくなってからの肥大と腐敗という意味では大企業病である。最後の生き残りといえる山県有朋が83歳で死んだのは1922年だが、どうもこのあたりからバランスが崩壊した。山県有朋は悪役と扱われることが多いながらも、生きている間は、それなりにうまくいっていたし、日露戦争開戦時の参謀総長は山県有朋である。伊藤博文が政党政治を重んじていたから、そこでバランスが取れていたとも言える。やはり山県有朋が死んでから、新世代の軍人や右翼の群雄割拠と言うべき様相を呈してきた。この当時の軍部と右翼が一体化しているのは、現在からするとやたらと奇妙に思えるが、これはおそらく国民皆兵の問題であろうし、日本男児であれば誰でも軍人なのである。軍部大臣現役武官制は、後に復活させたのは広田弘毅だが、1900年に山県有朋内閣が作ったのが発端である。明治維新は時代背景からして許されるとしても、議会政治になってからテロルをやるのはただの民主主義の破壊である。ナショナリズムの骨格が固まり、一般庶民の精神の隅々まで浸透したと言えるし、明治維新を醜悪な形で再現しようという下心のある連中が出てきたのである。関東軍の勝手な拡大路線もやはり勲章が欲しかったのであろうし、もはや大義など無い。治安維持法(1925)は隣国がソビエトであるし、スターリンという人物を考えれば、共産主義者を弾圧しないほうがよかったなどと決して言えまいし、必要な法律だったが、右翼が跳梁跋扈し、一旗揚げたいという野心を助長した。行動在りきの陽明学が復活し、テロルが猖獗を極め、言論で成り立つ政党政治は完全にぶち壊された。帝国主義とは、支配する国と支配される国というヒエラルキーで世界地図が塗り分けられることであり、フビライ・ハーンが13世紀にユーラシア大陸で行ったようなことが、地球全般に広まったのであるから、そういう血腥い世界分割の時代において、日本のような島国が平和主義というわけにもいかないし、帝国としての志向を持つしかなかった。軍国主義という陋習が長きに渡り日本を覆い尽くしていたというよりは、兵農分離から国民皆兵の時代へ移行するため、すべての日本男子に軍人の精神を教えこまなければならず、国民国家の礎として必要なナショナリズムの種を蒔いていたら、徴兵制のための口実であった天皇崇拝が強毒化して手がつけられなくなった。だから軍国主義が荒れ狂ってきた期間はせいぜい15年くらい、もしくは五年程度と言ってもいいのである。そもそも1935年に美濃部達吉が天皇機関説を理由に攻撃されたのは、天皇機関説が通説だったからである。明治憲法を読んで天皇親政だと思う人間はいないわけで、主権は国家にあると読むのが普通である。だいたい絶対王政なら憲法などないので、憲法があるからには、王様でも制約されると考えるべきであろう。1935年になって、その常識的な通説が排撃されたのだから、そこまではそれなりに民主的であったとも言える。ともかく軍国主義が膨れ上がりすぎた問題は、敗戦後マッカーサーに解決してもらった。ソビエトに関しては、アメリカに守ってもらうことになったので、治安維持法は必要がなくなった。日本人は骨抜きにされたというが、大企業病だから倒産しただけであり、リストラしてもらったのに恨み節はよくない。自力で解決出来なかったせいで外圧頼みになってしまったが、だからと言って、もはや陽明学には戻れない。軍服を着なければ戦えないのでは困るし、腐敗した既得権益と言論で戦うための新たな思想が必要である。







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