「そだちの臨床」杉山登志郎
発達精神病理学から見た子ども虐待を見ると、中核にあるものは愛着障害と慢性のトラウマである。愛着障害の存在は、自己の核となるものの不安定さ、および自律的情動コントロール機能の脆弱さをひきおこし、その結果、個体における復元力(resilience)機能の不全が生じる。その結果、容易にトラウマが自我の中核に届く構造がつくられる。その結果、解離反応が生じやすくなり、スイッチングや自我の分裂がひきおこされ、易衝動性がさらに強まるという病理的な進展を見ることができる。この状態はさらなるトラウマに対して、記憶を担う部分を切り離すことで防衛がはかられるので、記憶の断裂、その場反応などの実行機能の障害、さらにはトラウマ記憶によるフラッシュバックの頻発、さらなる体験の分断と悪循環を形成するのである。

学童期に至ると、多くの児童はファンタジーへの没頭を抱えるようになる。没頭している興味の対象であったり、好きなアニメのキャラクターであったり、ビデオの一場面であったりするが、一人で何役も演じ、ブツブツと独り言を繰り返すこともある。このファンタジーへの没頭は通常、小学校高学年から中学生年齢までつづき、幻覚・妄想があるかのように誤診される場合もある。

治療開始一年目は、主として夢を用いた治療をおこなった。そのなかで、患者がファンタジーの世界に青年期以後生きており、患者は華やかな芸能人という、そのファンタジーが現実で、現実の世界が架空の世界のように感じられていることが語られた。治療開始二年目になって、患者の自己史記憶の欠落と、部分人格の存在が明らかになった。とくに幼い女児の人格が折りに触れて現われ、その前後に記憶の断裂と体験の分断があることが明らかになった。

繰り返すが、臨床的にはむしろ、統合失調症と診断され、治療を受けている青年や成人のなかに、高機能広汎性発達障害など発達障害の併存例、あるいは誤診例が含まれていることのほうが大きな問題である。実際に自伝などを著わした高機能広汎性発達障害の成人には、統合失調症と誤診されていた者が少なくない。また一方で、これまで統合失調症の特徴として語られた問題が、むしろ自閉症スペクトラムのほうに適合する場合が少なくないことは、先に述べたとおりである。

発達障害と統合失調症との決定的な違いは何だろうか。統合失調症は青年期に好発し、独自の症状をもち、進行性の経過をたどる症候群であるのに対し、発達障害は発達の形成期からの乱れや遅れがあり、二次的に形成される問題も看過できないほど大きいが、基本的には固定的ないしは軽快してゆく経過をたどることである。

独り言をブツブツ言ってるような人は、これまで統合失調症と診断されていたが、その少なからずは発達障害に起因する解離性障害であるらしい。発達障害者は内面世界と外面世界が接触不良、もしくは切断されており、その不適応性から虐待やトラウマが生じやすいが、この地獄草紙が連なるディストピアから逃れるために、ファンタジーに傾倒することが見られる。脳内にファンタジー世界が繁茂し、軸足はそちらに置かれており、忌まわしい現実の方は仮の世界であるようだ。そもそも発達障害者は外面世界がよく見えてないのだから、精神病ではなく、自閉としての現実把握力の欠如から、現実に現実味を感じてないわけである。現実をちゃんと把握していたら発達障害ではない。光風霽月たる健常者にとって現実は肝胆相照らす仲間であり、いつでもシームレスに繋がって、その重みや手触りを感じながら生きているのだが、発達障害者にとっては、自らの死体を眺めているような地獄なのである。廃疾たる彼らの眼睛に現実は鮮明に映じてないのだから、その仮死状態の身体よりは、内面のファンタジーに傾倒するのは必然であろう。そしてこれを健常者の空想と同じだと考えていると甘いようで、自閉的なファンタジー世界の形成において、解離性障害が生じて複数の人格が生成されることもある。ここまで病状が進行すると、他の人格とのやり取りとして、幻聴が聴こえてくるそうだ。いわゆる離人症なのだろうが、これが統合失調症と誤診されることが多いようだ。幻聴があれば統合失調症、というのが常識になっているが、発達障害者が脳内でのファンタジー世界を育てすぎた結果、ということもあるらしい。もはや悪魔憑きと言うべき状態であろうが、現実世界に焦点を合わせる能力が欠損しているからこうなっているのだ。空想から離れて現実に帰還せよというのは容易いが、まさに自閉だから自閉と言うしかなく、なにしろ外界が曖昧にしか見えてないので、いわば生得的に俗縁から絶たれており、還るべき現実を端から所持してない。目や鼻が付いていても、もはや痕跡器官であり、まともに世界は把握しておらず、山紫水明の地と言うべき内面では香り高い緋桜が咲き誇っているのである。







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