感覚一元論を挫折させるものは、やはり肉体の健康問題である。人間の五感だと赤外線は見えないし、磁力も検出できないし、それがどうしたとも言えるが、知らず知らずに放射能を被爆しているとなると、これは健康問題として深刻である。キューリー夫人でさえ放射能の健康被害に気づかずに命を縮めたのだし、このような問題を総括すると、やはり肉体を物質世界の人質に取られているので、全てが夢の中の出来事のように、目が覚めれば解決というわけではない。徴兵されて傷痍軍人として片輪になるとして、それが夢の出来事であるのと現実では全く違う。この現実という悪夢が醒めたら天国にいるという夢想は破棄しておくと、やはり現実に片輪になり取り返しがつかないとすれば、肉体が物質世界のものであるのは確かであり、感覚はその奴隷である。

物自体は脳のスイッチを押すための鍵というか、脳を活性化させるための触媒というか、なんにせよ、たまたまそういう鍵の形という程度のものであり、キーホルダーの束を見て、それぞれの形が違うとしても、「玄関の鍵はこの形でなければならない」という究極の理由はないが、われわれが鍵を変更出来ないことに留意する必要はある。所詮は記号であるとしても、鍵がなければどうにもならないのが実状である。

精神世界はあまりにも当たり前で自明性があるのだが、実のところ、なぜ心や意識があるのかさっぱりわからないわけだ。神様が作ったという宗教的な説明で腑に落ちてしまうのも人間だが、自意識の自明性こそ訝しむべきであろう。脳細胞から意識が生まれるなら、カラダのあちこちの細胞に自意識があってもいいだろうし、脳細胞の特権性への疑義も述べねばならない。われわれは意志によって肉体を動かせるのを主体性の条件と考えがちだが、動かす肉体がない自意識があってもいいだろう。肉体が健康でないと生活が不便であるとか、肉体を維持しないと死んでしまうというのは人間的な事情である。







スポンサードリンク

最近の記事
月別アーカイブ
カテゴリー
リンク
スポンサードリンク
RSSフィード
プロフィール

ukdata

Author:ukdata
FC2ブログへようこそ!

katja1945uk-jp■yahoo.co.jp http://twitter.com/ukrss
あわせて読みたい
あわせて読みたいブログパーツ
アクセスランキング