2020.07.22
サラリーマンは同じ会社に勤務している
われわれは世の中の一部の面をちょろっと触った程度で死んでいく。だから、世界にかすかに触れた体験を通して、類似しているものを探し、それは同じであると推察する。自分の家族と他人の家族を混同して話すのもそういうことである。サラリーマンは全員同じ会社に勤めている。「仕事だから仕方ない」とか「上司に怒られる」とか「ノルマがある」とか、そういう堕した共感が社会に組み込まれている。家族も会社も法律に基づいて存在しているから、ある程度は似ていて、同じ腐臭を放つ。類似させるために法律を作っているという側面もあり、独自の家族とか独自の会社とかがあっても困るので、共通規格を強制するのであり、それによって、サラリーマンは同じ会社に通っているということになる。それぞれのサラリーマンの体験はまったく個別のものであり、別の宇宙の出来事とも言えるのだが、同じ規格の霊長類がとりあえず会社法という同じ規格を生きているので、類似しているのであろう。あるいは法律以外ではインフラへの依存というものもあり、たとえば最近のコロナ禍でテレワークとなれば、現在において発達しているインフラにシフトしているわけだが、その一方で、まだネットワークのインフラも力不足なので、結局は満員電車で通勤するわけである。時たまアニメの設定で、秘密結社が独自の技術を開発し、それを世間に公開せずに自分たちだけで使うというのを見かけるが、普通はそういうことはないわけである。われわれはコモンズの悲劇だか利益だか知らないが、同じ制度やインフラに群がって生きている。どこかの秘密結社が自分たちだけの移動手段を開発して、その秘密の手段で移動していることだって絶対にないとは言えないが、だいたいわれわれの社会は開き示されており、それによって顔も知らない奴らと世界を共有しているのである。われわれが肉体を持っているのはいわば潜在的に囚人であり、文字通り刑務所に拘束されることは少ないにしても、監視の目を気にして生きており、囚人と同じか、それに準ずる存在である。他人のことは本当は知らないし、建物の壁を透視することも出来ないが、だいたい想像はつくし、一望千里の平原のようなものである。そうやって衆人環視のもとに勝手に理解されて把握されているのが気に食わないとして自らの内面に秘密結社を作り王国を生み出してもいいが、その白日夢は他人と接触した瞬間に破綻するのである。
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