木村花さんの死は、人間が生きていく苦悩という実存的な課題から遠く離れており、物事の真実ではなく、法的に勝てるかどうかの話になっている。厳罰化を主張しておけば安全という人々の無責任さと相俟って、反知性主義が猖獗を極めている。知性ある人間は刑罰について吝嗇でなければならない。あまりにも阿呆が多いので仕方ないのだろうが、茫漠たる世情である。木村花さんが死んだのは、コロナでプロレス興行が中止に追い込まれたからであるが、これだと誰にも責任を問えない。であるから、誹謗中傷のせいで死んだとしたいのである。これで木村花さんの御遺族が儲かるわけではないと思うし、世論を動かすこと自体に酔ってるのかもしれないが、他罰的思考の見苦しさである。コロナは天災だから罪を問えないので、どうしても人災に話を擦り替えなくてはならないらしい。人生が苦しくて死んでしまいたいという実存的苦悩が等閑に附され、見当違いの勝利を目指した戦いが行われている。またこの件で正義ぶっている連中も、もはや義務感であろう。怒りを示さないと、正当化したことになるとやらで、とりあえず怒っているだけである。保身と言っても差し支えあるまい。誰も悪くないと言い張るとそれこそ投獄されそうな勢いである。物言えば唇寒しのごとく戦々恐々としているのだ。木村花さんは天災で死んだのだが、どうしても人災にしたいのである。天災が発生すると、人災にしたい弁護士が必ず出てくるが、それこそ弁護士に丸投げして、世間の人々は無関心でいればいいのである。とはいえ、火が付いてしまうとそうもいかず、実のところ、世論を味方につけると裁判で有利だという困った問題があり、これも社会を歪めている。ともかく、強調しておきたいのは、コロナでなければ木村花さんは断じて自殺してないということだ。プロレスの興行が中止になったのが最大の理由であり、誹謗中傷は小さな理由である。苦境に陥って自殺を考えている人の背中を押していいわけではないが、本質的には天災であるし、おそらく、多くの人々がコロナに巻き込まれ、活動制限の苦しさを知るからこそ、惻隠の情を催して、論理の擦り替えにお付き合いしているのだろうが、そろそろ幕引きにしなければならない。人生は苦しいし、コロナは本当に苦しい。他人とのコミュニケーションの機会が減り気が楽になった人もいるだろうし、飲み会に参加しなくて済むというメリットもあったに違いないが、人と人が触れ合う機会を削がれ、それこそ経済的に死活問題になった人もたくさんいるだろう。本当に死んだ人もたくさんいた。木村花さんはコロナ自殺の典型であり、コロナによる活動制限は人間を死に至らしめる。自粛生活の方が気楽という人もいるだろうが、木村花さんはプロレス興行の世界にいたのだから、もちろん真逆である。この人間的苦悩に向き合わずに、弁護士の真似事をしたり、弁護士の論法に動員されてしまうのは、あまりにも愚かである。弁護士は何でも主張できるのではなく、法的に~請求権と定められているところだけをピンポイントで主張する。無理して変な裁判を起こす人もいるが、基本的に訴訟というものはテンプレである。であるから、訴訟に適さないトラブルはたくさんあり、弁護士が人間的課題のすべてを引き受けることはないのである。コロナウィルスにより、世界中でたくさんの人が塗炭の苦しみを味わってきた。前を向いて歩けずに、後ろを振り返ることを強いられた。人間的活動が無に帰する二年間だったのである。死にたいと思ったり、現実に自殺したのは木村花さんだけではない。木村花さんの死を弁護士論法で人災と結論付ければ、世界中のコロナ自殺を弔えるとでもいうのか。木村花さん以外は誰も死んでないくらいの世論になっているが、大きすぎる誤解である。たくさんのひとがコロナの苦しみで死んだ。木村花さんもその一人であるはずだが、不思議なことに、誹謗中傷で殺された人というアイコンになったので、この二年間の人類の苦しみとは無関係の世界にいるかのようである。プロレスの興行が中止になって苦しんだということなら、同じパンデミックの時代を生きた人間として理解できるが、コロナと無関係の誹謗中傷が原因というのだから、まさに弁護士世界である。本当にうんざりして反吐が出る。人生は本当に苦しい、コロナで活動できないのは本当に苦しい、木村花さんも本当はプロレスの試合に出ることを渇望していて、もし出場できるのであれば、泥水を啜ってでも生き延びたのではないのか。その本質から目を背けて、他人のせいで死んだと主張する他罰的思考は、あまり真っ当には思えない。







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