2023.04.23
保護してくれてありがとう?
YouTuber界隈において、野良猫を保護したひとに「ありがとう」という風習があるようだ。まず、人間の言葉というのは儀礼的であり、いわば定型的な挨拶と言うか、とりあえずメールの末尾に「よろしくお願いします」と書いたりする。「保護してくれてありがとうございます」というのも、本当の意味でのお礼ではなく、定型的な挨拶、と考えることもできる。独自の表現を用いるよりは、定型的な挨拶文の方が無難なのである。ちなみに、現実世界で保護猫を飼っている人に「保護してくれてありがとう」とは言わないし、YouTuber界隈の挨拶文と考える方がよさそうである。おそらくすべての猫への愛というファンタジーがあるのだと思うが、実際には野良猫に餌やりする行為と通底している。自分の猫だけを大事にするのが実は正しいし、自分が飼ってない猫を大事にしてはいけない。もちろん排泄物のお世話までするのならいいが、たいていは餌やりだけなので、無関係な猫への愛は公害である。そもそも野良猫の保護だけを純粋にやっている人は少ない。たとえば9万人の登録者がいる「Hana Channel.保護猫ライフ」というチャンネルでは、おそろしいことに野良猫食堂と称して玄関先で野良に餌をやっているのである。そのうち懐いた猫は保護して飼っているので、この御家庭は保護猫だらけなのだが、おそらく住宅街であるし、近所迷惑も甚だしい。このチャンネルに限らず、野良猫に餌やりする動画は人気があり、バズりやすいのだが、動物愛護の悪夢であろう。野良猫の排泄物を清掃している人がいたら「ありがとう」と感謝したくなるが、餌やりがありがたいわけないし、餌やりの延長で懐いて保護したとしても、まったくありがたくないわけだ。むしろ刑務所に行け、と言いたくなるが、野良猫への餌やりに違法性はなさそうだし、末法の世である。
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